幼年期
初めての赤ちゃんを亡くしたあと、お母さんには甲状腺の問題と血液の不適合があったことがわかりました。
1年半後二回目の妊娠をしました。
胎児の様子を観察するために、超音波検査を毎月受けました。
お母さんは健康状態に気をつけていましたが、妊娠初期にウイルスに感染しました。
胎児がさかご(骨盤位)だったので、妊娠8か月で帝王切開をすることになりました。
未熟児出産となるため、お母さんはお腹の中の赤ちゃんの肺の成長を助けるための注射を受けました。
出産予定の前日赤ちゃんの心拍が乱れ、胎児切迫仮死となりました。
生まれてきた赤ちゃんは、首の周りにへその緒が二重に巻きついていました。
身体は小さく、おとなしい赤ちゃんでした。
お母さんは指示通りに赤ちゃんを仰向けに寝かせ、数か月間赤ちゃんは動きませんでした。
保育園に通っていた3歳のころは、他の子どもたちと一緒に遊ぶことはありませんでした。
いつも一人でいて、言葉での指示に反応することはありませんでした。
家ではドイツ語、スペイン語、英語を話していましたが、どこか違う世界にいるかのようでした。
7歳になった頃、お母さんは次のように語っています。
「息子は指示にしたがうことが難しく、先生の話にも注意を払うことができません。
他の子どもたちが絵や字を書いているとき、息子の前にある紙は白紙のままです。
子どもたちが先生の話を聞いているとき、息子はひとり別の世界にいるようです。
先生に質問をされても、反応しません。
手を使う作業はすべて避けていますし、書くことも大嫌いです。
数や算数が理解できません。
集中力がないためゲームをしても失敗ばかりですし、すぐに飽きてしまいます。
先生方は息子の問題を理解できないのです。
母親としては、そんな我が子を見ているだけでも胸が苦しくなる思いでした。」
ジャーマンがたどった「健常への道」についてさらに詳しくは、ここをクリックしてお読みください。
近況報告
高校在学中ジャーマンは特別な試験で最優秀の成績を収め、18歳になったらオックスフォード大学かケンブリッジ大学に入学願書を提出できる資格を得ました。
しかし、どちらの大学に進学したいのかを決めかねていたようで、しばらく考えたいとご両親に伝えています。
高校では陸上競技の短距離で優れた力を発揮し、その高校の過去60年にわたる歴代の記録を更新して、学校の史上最速のランナーとなりました。
高校最後の年には、数学、物理、化学、経済の上級クラスに属していました。
目標はエンジニアになることでした。
インタナショナル・バカロレアの資格試験でもよい成績を修め、特に物理の成績は優秀でした。
エンジニアになりたかったジャーマンは、オックスフォードでもケンブリッジでもなく、オーストリアのウィーン工科大学に進学を希望し、入学を許されて2年間そこで学んでいます。
オーストリアの大学で1年を過ごしたジャーマンから届いた手紙です。
スーザンさま
お元気のことと思います。
今は夏休みを楽しみながら、10月からの新学期に備えているところです。
ウィーンの大学での最初の1年の様子や近況をお知らせしようと思い、この手紙を書いています。
数学と物理は大好きな分野で、大学での勉強は順調に進みました。
いちばん頑張らなければいけなかったのは、授業をこの国の言葉であるドイツ語で受けることでした。
ドイツ語は家で父と話すときに使っていただけで、学校では習わなかったのでちょっと大変でした。
でも一学期が終わったころには、授業はすべて理解できるようになり、問題もなくなっていました。
一学期には、サッカーチームに入りました。
なかなか強いチームで、3位とはわずか1点差の4位の成績でしたが、次のシーズンには優勝できると思います。
二学期には友人と一緒に5キロマラソンに参加し、同じ大学の学生のなかで3位になりました。
とても楽しい経験でした。
最近は自転車も始めていて、3週間前には友人と二人でメキシコシティーを自転車で回りました。
3時間以上かかかりましたが、ゆったりと楽しみ、自分の住む街についての知識が増えました。
今年の夏は、ゴルフや水泳などたくさんのスポーツを楽しむのに加え、新学期に備えて勉強しています。
人間能力開発研究所が私を救ってくれたことに感謝します。
あなた方の助けがなかったら、ウィーン工科大学で機械工学を学ぶチャンスも得られなかったでしょう。
この大学の指導レベルはとても高く、学生にも高いレベルが求められます。
何より大切なのは、私がチャレンジしながら人生を楽しんでいることです。
愛と感謝をこめて、
ジャーマンより
私たちは、ジャーマンがさらに力を発揮し、世界で名を成す人になると確信しています。
ある意味ではすでに足跡を残しているのです。
不可能と思われていた道のりを、現在までの短い年月で到達したのですから。
もちろんこれは素晴らしい家族の助けがあってのことですが、未来を手にするために自ら立ち上がって闘ったジャーマン自身の努力、決意、そして勇気がその土台となったことは確かです。
決して諦めることなく答えを探し求め、発達障害と診断された子を持つ多くのご両親に、わが子も充実した素晴らしい人生を手に入れられるという希望を与えることになったジャーマンと素晴らしいご家族に敬意を表します。