脳障がい クロエのサクセス・ストーリー 希望の物語


この記事を書いたのは、人間能力開発研究所に付属するエヴァン・トマス研究所インターナショナルスクールの卒業生ナターリア・ノッティンガムです。
ナターリア姉妹とその弟は、人間能力開発研究所の健常児のプログラムで育ちました。
先日脳障害児のプログラムの見学のために研究所を訪れ、実際に目にしたことに感動し、この記事を書いてくれました。クロエは2013年に生まれました。
酸素不足のために脳の細胞の80パーセント近くを失いました。
重度の脳障害という診断を告げた医師からは、見る、話す、動くといった通常の機能を発揮できるようにはならないとも言われました。
ある医師は、クロエが病気になったら、そのまま逝かせてあげるのがいいのかもしれないとも言いました。
それからほぼ2年半が経ち、クロエの発達ぶりを見た医師たちは、信じられないと驚きました。
正常な機能が発揮できているだけでなく、多くの分野では年齢レベルを超える能力を身につけていたのです。
医師たちは、これはまさに奇跡であり、クロエはこのうえなく運が良かったと言いました。

クロエの話を聞いた人は皆、「信じられない」と思うでしょう。
でもご両親は、クロエがここまできたのは運がよかったからではないと分かっています。
クロエが達成してきたことの一つひとつは、努力の結果なのです。
クロエの成功は、多くの人々の決意と手助けがあったからに他ならないと、お母さんは言います。
そしてその道のりは、《希望》の光という簡潔だけれども強力な力が導いてくれたものだと言います。

人間能力開発研究所にやってくる他のご両親と同じように、クロエのご両親も、「この子のようなケースには希望がもてません」という言葉をそのまま受け入れるつもりはありませんでした。
「親こそ最良の医師」の本を読んでから2か月後、クロエが生後2か月のとき、聴覚・視覚・触覚へ働きかけをするプログラムを自分たちで始めました。
さまざまな音を聴かせ、たくさんの黒と白のビッツを見せ、熱い・冷たい、ザラザラ・滑らかなど、対照的な感覚を教えることを、一日に何回も繰り返しました。
クロエの運動能力を引き出すために、傾斜板やブレキエーション梯子を準備しました。

赤ちゃんのころから知的な
働きかけをたくさん受けました
しばらくして家族は、ヨーロッパからフィラデルフィアに向かいました。
初めての研究所訪問でした。
クロエはまだ生後5か月でしたが、機能評価の結果、脳の発達年齢は7か月と判断されました。
この時点ですでにクロエは傾斜板を降りてこられるようになっていました。
物をつかんだり、細かいものも認識したりできました。
プログラムを家庭でおこなったのはたった3か月でしたが、それでもクロエはこれだけの変化を見せたのです。昨年5月、クロエはご両親とお兄ちゃんと共に研究所にやってきました。
5回目の訪問です。
私は、ハイスクール3年のプロジェクトを完成させるために1週間研究所に滞在しました。
その間にこの素晴らしい家族と出会いました。初めて会ったクロエは、健常な2歳半の女の子にしか見えませんでした。
事前にクロエについての情報をもらっていなかったら、普通でないところがあるとは想像もつかなかったことでしょう。1週間を通じてクロエを観察し、確かにクロエは「普通」ではないことが見えてきました。
「普通」どころか「優秀」だったのです。
様々な分野でそれがわかりました。
月曜日の朝の機能評価のとき、読解力を確認するために、手作りの本の内容についてクロエにスタッフが質問をしました。
この年齢の子どもたちには難しいだろうと思われる質問でしたが、クロエは難なく答え、すべて正解でした。
見えるようにはならないと言われていた子どもが、人間能力開発研究所の発達プロファイルにある視覚機能のなかでも最高のレベルである「読む」能力を発揮しているのです。
感動的でした。
クロエの反応や指示にしたがう能力からみると、ご両親が言っていることをすべて完全に理解していることは明らかでした。
お母さんはクロエが赤ちゃんのころから
教えていました
年齢レベルに達していない唯一の機能は言語ですが、この分野でも大きな進歩を見せています。
今回の研究所訪問でクロエは、単語10語から25語と少なくとも2つの二語文が話せるということで、言語のヴィクトリーを獲得しました。
次回の研究所訪問までに、言語のレベル6、つまり単語2000語と短い文章を使って話せるレベル目指すことになりました。クロエのすてきな笑顔、明るい笑い声、愛らしい性格は、そばにいるだけで周りの人を幸せにします。
最近では、100メートルをノンストップで走るという「走るヴィクトリー」を獲得しました。
これからの半年で、ノンストップで1600メートルに距離を伸ばすことが目標です。
お母さんがブレキエーションを教えます
この少女の最大の魅力は、これまでに成し遂げてきたことよりも、その素晴らしい人となりにあることに異論を唱える人はいないでしょう。
クロエが楽しそうに飛び回り、時にはふざけてご両親に抱きついたり、キスをしたりして愛情を表現する様子を見て、私は心を奪われました。
クロエと、そのご家族と共に1週間を過ごせたことは、この上もない歓びでした。
スタッフのモニークがクロエの家族に
栄養プログラムの指導をしています

ナターリアも同席しました
最初はどんな状態だったのか、そして現在に至るまでの道がどれだけ長かったかを知れば、医者が「これは奇跡の物語だ」と言うのももっともだと思います。
でも私は、これは奇跡の始まりにすぎないと付け加えたいと思います。
クロエはこれからも否定的要素を乗り越えつづけ、健常への道の旅を続けることでしょう。 

ナターリア・ノッティンガム
エヴァン・トマス研究所
インターナショナルスクール卒業生

 
双子の姉妹ナターリアとアナ、弟のジョナサン
三人とも人間能力開発研究所の早期開発プログラムをおこない、研究所に付属するエヴァン・トマス研究所インターナショナルスクールで学びました。