読むことについての通説


通説1:学校に入る前に読むことができるようになった子どもは、学校で退屈する。この通説は誤った作り話とは言い切れません。入学前に字が読めるようになった子どもにとって、学校は退屈なところになるでしょう。
しかし読めないまま学校に入った子どもも同じです。
どの子も学校では退屈します。

学校は退屈なところだからです。

子どもたちは期待に胸をわくわくさせて学校に通い始めますが、残念ながらその期待は裏切られます。
新しいバックパックや、初めてのスクールバスを楽しんだ一年生も、その新鮮味が薄れると学校は退屈という現実に引き戻されるのです。
子どもは学校に行くか行かないかの選択肢を与えられていませんから、毎日休み時間やお昼休みを待ちながら、そして家に帰る時間がくるのを今か今かと待ちながら、何時間も学校で過ごすという現実を受け入れざるを得ないと身をもって知るのです。

問題はどんな子が学校で退屈するのかではなく、どんな子が学校での退屈な時間を上手に処理できるのかということです。
一年生を受け持った先生が賢かったら、他の子どもたちが教わっている間、本が読める子どもは図書館で時間を過ごすという方法をとることもできるでしょう。
読める子にとっては、素晴らしいチャンスです。
もっと賢い先生なら、クラスの子どもたち、とくに単語でさえなかなか読めるようにならない子どもたちを指導するのに、読むことのできる6歳の子どもをアシスタントにするでしょう。
字が読める幼い子どもたちにとって、自分のちからをさらに伸ばすことができる、とても良い方法です。

入学したときにまだ読むことができない子どもは、その後もずっと苦労することになるのです。
1年が終わるころには数百語読めるようになる子もいるでしょう。
しかしそこまで届かない35%の子どもたちは、自分は勉強ができない子なのだと思い知らされて、いじけたり、挫折感を覚えたり、やる気を失ったりするのです。

通説2:学校に入る前に読みを教えると、子どもは鼻持ちならない小さな天才になってしまう。幼いころから読めるようになった子どもは、たくさんの情報を手にして、その結果読みを学ぶ機会のなかった子どもに比べて知的により賢く成長しているということは、この通説も認めています。読む能力を身につけた子どもは、本を読むことで世界中を探検することができます。
何から何まで大人に頼らなくても、自分で知的な冒険ができるのです。

読むことが得意なら、確かにたくさんの知識を得られます。
学ぶという能力にも、自信をもつことができるのです。

子どもはそのように知識を身につけて学校に入ります。
しかしこの通説2は、知識が豊かだと鼻持ちならない子どもになると言っているのです。
それは間違いです。

安心してください。
そんなことはありません。

生まれつき鼻持ちならない子どもはいません。
鼻持ちならない大人が子どもと長いこと一緒に過ごすなかで、子どもに対してたちの悪いことをしてきたのであれば別でしょうが、元来子どもは優しくて心が広いものなのです。

家庭でお母さんやお父さんと仲良く一緒に時間を過ごし、読むことを学んできた子どもたちは、その経験をとおして社会性の面でも多くを身につけていきます。

そういう子どもたちは、自分が好きで自信をもっています。
学校では穏やかな空気をつくる「ピースメーカー」的存在になることがよくあるのを、私たちは50年以上にわたる経験のなかで目にしてきました。
いじめられている子どもに近づいて仲良くなれる子どもです。
他の子をいじめる子は、自信がなく不満を抱えている子どもなのです。
単純な構図です。

通説3:幼児は集中力が続かないから、読むことを学べない。18か月の子どもが何をしているか、よく観察してごらんなさい。
周りの人たちをあわてさせるようなことをよくしています。なぜでしょう。

幼い子どもの好奇心は、次から次へと限りないからです。
私たち大人がどんなに頑張っても、これはなんだろう、知りたいという子どもの強い気持ちを、おさえつけたり、おしとどめたりすることはできません。
電気スタンド、コーヒーカップ、電気のソケット、新聞など、部屋にあるものはすべて興味の対象です。
それでスタンドを倒してしまったり、コーヒーをこぼしたり、新聞をビリビリに破いたりするのです。
それを見た大人は、幼い子どもは多動で、注意力が足りないと決めつけます。

しかし正しい言い方をすれば、幼い子どもはあらゆるものに注意を払っているということです。

脳へ情報が入っていく経路は5つです。
見る、聞く、感じる、味わう、匂いを嗅ぐの5つだけです。
幼い子どもたちはこの経路をすべて動員して、自分の住む世界について学んでいるのです。
今まで見たことのないものが部屋にあれば、それをチェックしないうちは部屋から出て行きません。
手の届かないところにあるものをじっと見つめたり、ものによっては音を出してみたり、触ってもいいものはすべて触ってみます。
さらになめてみたり、匂いを嗅いでみたりしたくなれば、そうすることもあるでしょう。

幼い子どもがこのようにすばらしい好奇心を発揮して「実験」する様子をみて、大人はどう思うでしょう。
部屋の中のあらゆるものに(本当の意味での)興味を示す様子をみて、子どもはひとつのことに長続きしないとか、すぐ飽きると結論づけてしまうことがよくあります。
幼い子どもの注意力、興味、知りたいという意欲は並外れています。
単語を書いた紙を見せたら、子どもはまさにあっという間の驚くべき速さでそれを吸収します。

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