脳性まひ アイヴァンの サクセス・ストーリー


 

脳性まひは治らないのか

出産を長引かせないため、陣痛促進剤を使い、その上鉗子を使っての出産でした。
アイヴァンは首にへその緒が巻きついた状態で生まれてきました。
黄疸があり、頭部の両側には血腫がありました。
最初赤ちゃんは大丈夫と判断され、退院して家に帰りました。
静かな赤ちゃんで、全くといっていいくらい泣かず、ほとんど一日中眠っていました。
生後8か月になるころ、アイヴァンの右足首が非常に硬いことや、左側と比べて右半身の動きが全体的にぎこちないことにご両親は気付きました。
1歳1か月のときにとったCTで、脳に損傷があることがわかりました。
医師は脳性まひと診断しました。ご両親はわが子のためにできることを探し始めました。
そしてグレン・ドーマン「あなたの脳障害児になにをしたらよいか(邦題・親こそ最良の医師)」の存在を知ったのです。
その内容に希望を見出して、人間能力開発研究所で開催されたコースを受講し、脳に働きかけることで発達を促すことができると学んだときから、ご両親の人生は変わり始めました。
コースの中では、発達プロファイルを使って子どもの脳の発達について学ぶ時間があります。
生後1歳6か月だったアイヴァンの機能は10か月レベルであることがわかりました。見るものに目を合わせることができず、触覚も鈍く、右半身が硬いためにスムーズに歩けませんでした。
1歳6か月の子どもは簡単な会話ができるのに対し、アイヴァンはひとことも話せませんでした。
伝えたいことがあるときは、何らかの声を発するだけでした。
右手を使う機能の発達がとくに遅れていて、ものを握ることができませんでした。
たいへんな毎日でした

ご両親は2歳になったアイヴァンを連れて人間能力開発研究所を訪れました。
アイヴァンは機能評価を受け、それに基づいたプログラムをスタッフが作成しました。
そしてさっそく家庭でそのプログラムを開始しました。
完全な交差パターンで動くことの感覚を身につけるために、パタニングをおこないました。

運動面の発達の向上を目指して、歩く、走るためのプログラムを実施しました。
ご両親は、まだ2歳だったアイヴァンに読みを教え始めました。
これは、知性面の能力と言語の発達にとってとても大切でした。
触覚の刺激も一貫しておこないました。
これは、感覚の鈍かった右半身を「目覚めさせる」のに特に有効でした。

右半身の硬さが軽減し始め、歩くのが楽になっていきました。
話もできるようになってきました。
アイヴァン自身にとって、とても嬉しいことでした。
このころを思い出してアイヴァンは言います。

「よくなっているという実感があったのを覚えています。」

さらに、自分にはもっと能力があると感じたという記憶もあります。
お母さんは、知性のプログラムと運動のプログラムを上手に組み合わせて、アイヴァンがいつも楽しくおこなえるようにしました。
たとえば、運動プログラムをおこなったご褒美として百科事典的知識のプログラムができるといったやり方です。

「家族として一体感が生まれました」とアイヴァンは言っています。

硬直した右腕の機能を改善するのに
ブレキエーションは役に立ちました

右手の機能を向上させるために、ぶら下がりのプログラムをおこない、その後ブレキエーションを始めることになりました。
手を使う機能を高め、脳への酸素の供給量を増やすために胸部を発達させるのに、ブレキエーションはとても重要でした。

アイヴァンは7歳になるまでに、素晴らしい発達を遂げました。
触覚の問題は完全になくなりました。
驚くほどしっかりと走れるようになっただけでなく、部屋の隅から隅まで、片足跳びで移動できるようにありました。
話すことにも問題はなくなり、ご両親も研究所スタッフも、アイヴァンの語彙と話し方が年齢レベルを超えていると評価しました。
スペイン語と英語で、10歳レベルのものを読みこなし、書くことも、スペイン語と英語の両方で、年齢レベルを超えました。

トライアスロンにも挑戦し、水泳400メートル、自転車10キロ、ランニング5キロをノンストップで完走しました。
体操もおこないました。

体操もとても上手になりました
ほとんどの分野で年齢レベルに追いついただけでなく、さらに高いレベルになっていました。
人生の新しい段階にチャレンジする準備ができたのです。
集中プログラムを卒業し、人間能力開発研究所の構内にあるエヴァン・トマス研究所のインターナショナルスクールに入学し、同年齢の健常児と共に学ぶことになりました。生徒となったアイヴァンは、シェイクスピア劇、トライアスロン、長距離走、日本語、ヴァイオリンなど、知性面、運動面、社会面でのチャレンジを続けました。
8歳で初めてのトライアスロンを完走
インターナショナルスクールのクラスメートと
人間能力開発研究所で過ごした日々について、アイヴァンは言います。
「私の真の成長はこの場所から始まったのです。」
集中プログラムについては、こう述べています。
「私は集中プログラムで育てられたというより、集中プログラムという土台の上に私という人間が作られたというのが正しいと思います。
1994年研究所のスイマソンに参加しました
後列中央がアイヴァン
脳性まひと診断された少年が、優秀なアスリートになり、スポーツ科学を学び、多くのアスリートが生理面で最高の状態で、持てるちからを十分に発揮できるようにすることを仕事としているのは、信じられないことかもしれません。
「人間能力開発研究所の運動面と生理面のプログラムは、人の役に立ち、人間の身体と可能性をより深く理解するという現在の仕事へと私を導く力となってくれたような気がします」とアイヴァンは言います。アスリートをサポートする仕事の中で、最近のスポーツ科学をアスリートたちが理解できるように簡潔に説明することを目的とした「Running in Systems」というタイトルのブログも開設しています。
また、アスリートたちがそれぞれの人生の目標を達成するための指導もおこなっています。先日アイヴァンはパートナーのハイジと共に人間能力開発研究所での「赤ちゃんの知性を何倍にもするには」コースを受講し、さらに「あなたの脳障害児になにをしたらよいか」コースも受講しました。
親としてできるだけ情報を得て、将来に備えたいとのことでした。
アイヴァンと再び会うことができたこと、素晴らしい仕事をしていることを、私たちはとてもうれしく思っています。研究所を再び訪れたアイヴァンへのインタビューで、プログラムの経験についていろいろと話を聞かせてもらいました。(言語は英語)
「赤ちゃんの知性を何倍にもするには」
コースでのアイヴァン
初めて読みのカードを作りました
「人間能力開発研究所のプログラム」を始めようとしている子どもたちへのアドバイスは?という質問にはこのように答えます。

ご両親と子どもたちの両方に伝えたいことがあります。
流した涙、使った時間、そして確証のなさまでも含めて、すべて価値のあることなのです。
諦めないこと。
あなたがおこなっていることの一つひとつは、あなた自身のためにあるのです。
この先どこへ行こうとも、あなたと共にあります。
どんな環境に自分を置くことになろうとも、あなたを育て、成長させるものなのです。
どんな道を選ぼうとも、それについて責任が持てるようになるのです。
自分がしたいこと、何をするのかを選ぶための要素になります。
自分にできることがあるのだろうかという疑問は沸いてこないでしょう。

「できない」のではなく「まだできない」だけなのだとしっかりと認識しましょう。
なにかを望んだとき、それを実現できるかどうかは、ものの考え方、使う時間、そして鍛錬次第です。

もうひとつ、たくさんの勇気も!

アイヴァン、あなたは子どもたちが進むべき道を示してくれました。
あなたとご両親は、脳は使うことで成長すること、そして「脳の可塑性」は、単なる近年の話題ではなく、脳への働きかけを続けることによって開ける新しい世界を意味していると証明してくれました。