脳性まひ 双子のマトヴェイとティモフェイ サクセス・ストーリー


二人はお母さんの手製の本を
一緒に読むのが大好きです

 

マトヴェイとティモフェイは双子の兄弟です。
予定日より2か月早く未熟児で生まれ、体重は二人とも2キロに届きませんでした。
生まれてすぐに保育器に入れられ、モニター装置をつけて、経管栄養という状態が2週間続きました。
医師によれば二人は出産の過程で重度の低酸素症を起こしていたとのことでした。
生後1か月のMRI検査では、脳に虚血症が見られました。
 
1歳2か月になった二人は、ある程度の発達は見せていましたが、同年齢の子どもに比べるとかなり遅れていました。
この時点で二人には脳性まひの診断がくだされました。従来の理学療法による治療を受けましたが、特に成果は見られませんでした。
人間能力開発研究所のことを知ったお母さんは、情報を集め始めました。臨床的な診断は二人とも同じでしたが、運動面の発達ではマトヴェイはティモフェイよりもかなり遅れているようでした。
ティモフェイが手とひざで体を支えて高ばいができるのに対し、マトヴェイは床に置かれても前に進むことは全くできませんでした。
身体もティモフェイより硬い状態でした。
言語に関しては、二人とも年齢レベルよりかなり遅れていました。
マトヴェイはひとことも話すことができませんでした。
ティモフェイはそれより少しよいとはいえ、3歳のときに話せたのは15語だけでした。
「あなたの脳障害児になにをしたらよいか」コースを受講後、お母さんはすぐに家庭で二人のためのプログラムを開始しました。
二人が床で動く機会を最大限に与えること、知的興味が広がる楽しい読みのプログラム、触覚刺激、体調を整える栄養のプログラムなどが含まれた、かなり本格的なプログラムでした。お母さんはまず、床でできるだけたくさん動くことに力を入れました。
二人は一緒にプログラムをしました。
腹ばいをする機会をたくさん与えることを重視して、お母さんはマトヴェイの腹ばいの距離を少しずつ伸ばすように指導しました。
ついには家じゅうを腹ばいで動き回るようになり、マトヴェイの1日に腹ばいをする距離は合計数百メートルに達しました。
腹ばいができるようになると、マトヴェイはすぐに手とひざで体を支えて、高ばいをし始めました。
このときティモフェイは、高ばいはできるけれど歩けませんでした。
ティモフェイが歩くためには、もっと高ばいをする必要があることを理解していたお母さんは、それを実行しました。
そしてティモフェイは1日に1600メートルも高ばいをするようになり、這う速度も上がって、動きも力強くなりました。

 

頭上梯子を使うティモフェイ

 

そして、頭上梯子を使って歩くようになりました。
それから1年後、ティモフェイは自力で第一歩を踏み出しました。
現在は歩くことが移動の手段となり、平らなところだけでなく、さまざまな表面を歩いています。

 

頭上梯子を使って歩くティモフェイ
もう頭上梯子は必要ありません

 

現在マトヴェイは、高ばいでどこにでも動いていくことができます。
1日に高ばいをする距離はティモフェイと同じ1600メートルに達しました。
ティモフェイが自力で歩くプログラムをしている傍らで、マトヴェイは頭上梯子を使って歩くプログラムをしています。
1日に400メートル以上歩きます。

二人はいつも一緒で、頑張りながらも楽しくプログラムをおこなっています。
プログラムをしっかりできた時は、ご褒美に海賊の扮装をします。
二人は海賊にあこがれているのです。

 

海賊出現?遊んでいるの?一緒に歩く練習?
どれもあてはまるようです

 

運動面の発達が向上するのに伴って、呼吸の機能も改善してきました。
その結果言語の能力も向上しました。
読みのプログラムを通じて、お母さんは二人に知的な刺激をたくさん与えました。
単語や文章を教え、二人が興味を示した物事について本をたくさん手作りしました。
運動面の発達を促すために与えられた機会と、知性面での刺激は、言語能力の発達の助けとなりました。
二人はどんどんと話ができるようになっていきました。
かつては一言も話せなかったマトヴェイは、現在数千もの単語を使って言いたいことを自由に明瞭に文章で表現しています。
ティモフェイも言語面で素晴らしい発達をしています。

マトヴェイとティモフェイには、世界一のコーチがついています。
毎日子どもたちにやる気を起こさせ、一緒にプログラムをして、子どもたちがさらに発達する力となっているお母さんです。
大きな問題を抱えた子どもが一人だけでなく、二人もいたのですから、お母さんは押しつぶされてしまってもおかしくない状態だったはずです。
お母さんはそれでも希望を失わず、子どもたちと素晴らしいチームを結成したのです。

二人は現在健常への道を歩み続けています。
これからも「勝利」し続け、さまざまなことを成し遂げて私たちを驚かせてくれることを楽しみにしています。